医学部小論文頻出ワード『遺伝子治療』

遺伝子治療とは…

遺伝子治療とは、遺伝性疾患と呼ばれる遺伝子に異常がみられるために機能不全に陥っている細胞を修復・修正し、病気を治療することです。

遺伝子治療の成功例として、1990年にアメリカにおいてアデノシンデアミナーゼ欠損症(ADA欠損症)による重度免疫不全患者に対する初の遺伝子治療に成功し、1995年には日本でも北海道で同様の成果が得られたことがあります。

ただし、このADA欠損症に対する遺伝子治療が必ずしも好成績を残しているわけでもありません。さらに発ガンしたケースがあったり、また治療の安全性もまったく保障されていません。

遺伝子治療の問題点

遺伝子治療の成功の鍵となるのは「遺伝子の運び屋」と呼ばれる「ベクター」です。

ベクターには無毒化したウイルスである「ウイルスベクター」、人工化合物などの「非ウイルスベクター」があります。

人工ベクターはウイルスベクターに比べると安全性は高いものの、遺伝子を運ぶ能力(遺伝子導入効率)が大きく劣り、実用化には技術的な課題が多く残されています。一方、ウイルスベクターは導入効率は良いことが知られていますが、安全性に関して問題があります。

1999年にアメリカで、アデノウイルス(肺炎、結膜炎の原因ウイルス)ベクターの大量投与を受けた患者が死亡、2001年にフランスでレトロウイルス(マウスの白血病原因ウイルス)ベクターによる患者への治療で白血病の発症、2007年にはイギリスで同じ症例があるなど、重大な副作用がこれまでに報告されています。

遺伝子治療を成功させるためには、遺伝子を運ぶのに十分な能力、十分な安全性を確保した全く新しいベクターを開発することが肝心となります。