医学部小論文頻出ワード『SOL(生命の尊厳)と尊厳死』

SOL(生命の尊厳)とは…

SOLとは”Sanctity of Life”の頭文字を取ったもので、訳すと「生命の尊厳」となります。一般的に、人間の生命そのものが神聖であるという考え方です。生命は尊いものであり、いついかなる状況でも死を選ばず生を選ばなければならないという立場です。安楽死や尊厳死ということをを考えた場合、SOLと対立する概念としてQOL(Quality of Life)があります。

QOL(生命の質)

QOLとは”Quality of Life”の頭文字を取ったもので、「生命の質」のことを言います。一般的に、「人間としていかに生きているか」「生きている状態の質」を重視すべきという考え方です。辛さ、痛み、苦しみ、認識力の低下などが生活の質の低下に関わる指標となります。延命治療によってより長く生きることを優先させるSOLと対立するものです。さらにここで、尊厳死という考え方も出てきます。

尊厳死

過度な医療を避け、人としての尊厳をもったまま迎える自然な死のことです。

医療技術の進歩により重症患者でも呼吸や栄養補給、痛みを管理できるようになっています。また、疾病によっては死にいたる過程を人工的に引き延ばすことができます。このような状況をを受けて「尊厳死」が議論されるようになりました

「安楽死」と「尊厳死」の違い

注意すべきは、いわゆる「安楽死」と「尊厳死」との違いについてです。

「安楽死」とは主に、1.末期がんや遺伝性難病により患者に耐えがたい苦痛があり、2.患者の死が不可避に目前に迫っており、3.患者の苦痛の除去・緩和に関して手段がなく、4.患者が自分の生命を短縮したいという意思を明示しているという4つの条件が満たされるとき、患者が医師に対して委託する形で行われるものをいいます。

一方「尊厳死」とは主に、遷延性(せんえんせい)意識障害としてまったく治癒の見込みなく深昏睡の状態にある患者に対し、その状態に尊厳がないとして、生命維持のための援助を止め、ときには毒物の投与等によって死に至らしめることをいいます。

尊厳死は、特定の生存のあり方に「尊厳がない」という理由で、「尊厳のある死」が選択されることといえます。これは、すべての人間の生命は神聖なものであるという生命の尊厳の観点から見れば、容易に許されるものではありません。

尊厳死の難しさ

患者の家族など、尊厳死を求める側から、生命の尊厳という観点から機械的に生命維持だけを続けることに批判が行われることがあります。批判の内容は、まったく意識のない遷延性意識障害の場合には、人格というものが認められない以上、延命治療を施したところで「人間として生きる」尊厳を欠いているのではないか、というものです。

ただし、何を持って「人間の生命」と定義するのかは難しく、安易に尊厳死を認めてしまえば、たとえば重度の知的障害をもつ患者などにも「人間として生きる」ことができない者として尊厳死が適用されるということにもなりかねません。

生命の尊厳とは何かということを考えるきっかけとして、尊厳死について議論することは大事ですが、医師の立場から尊厳死を簡単に認めてしまうべきでないともいえます。

生命倫理学の立場から考えると、この場合には患者の自己決定権を尊重する、という基本的態度が見えてきます。どのような治療を行うかは、医療従事者が決めるのではなく、患者が医療従事者からの助言を参考にして、自分で決めるという原則があるのです。

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